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カナダ・バンクーバーで、M/Mロマンスとか、BLとか

『フェア・プレイ(All's Fair #2)』恋愛・友愛・家族愛、そして60年代の社会情勢にまで踏み込んだ、骨太なストーリー展開

1巻の フェア・ゲームでめでたく…ようやく?思いを通わせたエリオットとタッカー。しかし「両想いでハッピーエンド💕」なんて簡単には終わりません。

彼らの関係は、素直に想いを伝え合う段階から、関係を維持するためにどうしていくか?という、長期付き合うカップルにとって避けては通れないステップに移行していきます。

それと同時に起こる、エリオットパパ・ローランドへの脅迫と殺人未遂。

今作はエリオットとタッカーの恋愛模様に加え、若かりし頃のローランドが生きた1960年代の社会情勢にまで踏み込み、さらに家族愛についても考えさせられる、いつも以上に骨太で目が離せない圧巻のストーリー展開となりました。

さっそく感想を書いていきますが、盛大にネタバレしていますのでご了承の上お進みください。
ただし、3巻の内容には触れませんのでご安心を。

※日本語翻訳版は読んでいないので、各英文の翻訳部分は私の意訳です。間違ってたら教えてください!

All's Fair シリーズ

3冊で完結しているお話です。今回はその2冊目。

あらすじ

FBIの元同僚で恋人のタッカーと過ごしていたエリオットは、深夜実家焼失の知らせで叩き起こされた。火事は放火だった。父・ローランドには回顧録の出版をやめろという脅迫が来ていたという。エリオットはローランドを家に避難させるが、散歩中をクロスボウで狙われる――。タッカーは珍しく携帯の電源を切り、家に帰ってこなかった。彼は何かを隠している……。待望の「フェア・ゲーム」続編!!Source : フェア・プレイ (All's Fair #2)

カップリング

エリオット・ミルズ

元FBI捜査官で、今はPSUで歴史を教える大学教授。
グースアイランドのキャビンにタッカーと同棲を始めて6カ月。

タッカー・ランス

FBI捜査官。 多忙のため、シアトルのアパートはキープしてある。

みどころ

二人の関係を維持するために

エリオットとタッカーが再び付き合い、同棲を始めて6カ月。
どれだけ愛する人とでも、避けては通れないのが「関係の維持への努力」。
これって付き合い初めだろうと何年一緒に過ごそうと、付いて回る問題だと思います。

しかし、如何せんお互いに頑固で意地っ張りな二人。もう相変わらず読んでいてハラハラというか、こっちが頭を抱えるというか…。1巻から引き続き、お互いに大好きなのはダダ洩れなんですけどね。

英語圏でもよく「仲良しカップルの秘訣は歩み寄り」なんて言いますが、この「歩み寄り(compromise)」って単語、私も心がけている言葉であり、好きな言葉でもあります。お互いが満足するラインを一緒に考えましょうって感じで、どちらかが我慢するのでも、どちらかだけの主張を通すわけでもなく。

ただ、ちょっと気になるのは、何も考えずに「compromise」を辞書で引いちゃうと、辞書によっては「妥協」って訳が1番最初に出ることがあって、それはニュアンスが違うなぁと思うんですよね。

こういう時、やっぱり英語学習には英日辞書より英英辞書の方がいいと再確認する。何度私も単語を微妙に間違えた意味で覚えてしまっていて、パートナーからその間違いを教えてもらったことか。

ローランドと60年代の社会情勢

エリオットとタッカーの恋愛模様に加え、エリオットパパ・ローランドが「怒れし若者」だった、1960年代のヒッピームーブメントの話がメインとなる今作。

私は正直なところ、この本を読むまで全くと言っていい程、当時の社会情勢等の知識が無かったので、非常に興味深く読みました。

この本のおかげで、当時のベトナム戦争や、その反戦運動等について調べるきっかけになったし、知識を入れてから改めてこの本を読むと、より一層本を楽しめてお得感が満載でした。

余談ですが、後から何故かものすごくベトナム戦争に対して興味が湧いて、ベストセラーと名高い本も読んでみました。

日本語翻訳版も出ていて、なんと翻訳したのは村上春樹さんとのことで、こちらも読んでみたかったんだけど、Kindle版が無くて残念。

ちょっと話がずれたんだけど、日本のBLだとこんな反戦運動などのネタを中心に持ってこないので、これぞ海外のM/Mロマンス小説を読む醍醐味といった感じ。

日本で反戦運動などを題材にしたBL、いやBL以外のマンガでも、そんな作品あったかな?と思い返してみたんですが、あの有名な「あさま山荘事件」へと続く学生運動を題材にした 『レッド』 ぐらいしか思いつきませんでした。私が知らないだけかもしれませんが。

ネタ的に日本だとバッシングが多くなるから、あまり題材にしないのか、それとも、そもそも読者があまり興味がないネタなのか…?

まぁ、それはいいとして。

シリーズ1巻、3巻と比べると、どうしても地味な印象を受けがちな今作なんですが、別のベクトルで印象深い作品であること間違いなし。

度重なるタッカーの秘密

タイミングが悪いことに、タッカーが隠していた秘密をエリオットが知ってショックを受けることが重なってしまい、「もうタッカーは信じられない!」と憤り大喧嘩に発展。相変わらず止まらないよね、怒り出したら…。カナダのモントリオールまで飛んでっちゃったし。

まぁ、タッカーの産みの母・トバが見つかって、エリオットに黙って彼女と会い、携帯の電源も切っていたのは、分からなくもないですよね。タッカーも自分の中で気持ちが整理できてないから、話せなかったんだろうな、と。

で、問題は1巻で捕まえた彫刻家で殺人犯のコリアンが、エリオットに面会を求めている事実をエリオットには伝えなかったことの方ですよね。エリオットの問題なのに、本人に何の確認もしないのは「フェア」じゃないな、と。

相変わらずお互いに意地っ張りなので、もう喧嘩したら激しく燃え上がって、歩み寄るまでに時間がかかる二人ですが、それも彼らのペースであり、この本の読みどころの一部。モダモダしながら読み進める楽しさ。

ただ、少しだけ分かるんですよね、エリオットの気持ち。
というのも、私のパートナーも過保護というか何でもやってくれるタイプで、私としてはありがたいんですが、たまに彼が何でもやり過ぎて、何だか馬鹿にされてるような、子ども扱いされてるような、見下されてるような?気分になる瞬間があります。私だって自立してて自分で出来るのに、と。

まぁ、向こうは一切そんな気はなく、むしろ私のためを思っての言動なんだけど。
パートナーといえど、どこまで踏み込むかは難しいところですね。自立と依存、保護と支配のバランスというか。

好きなシーンをひたすらあげる

Take Care = I Love You

“Okay. Gotta go. I’ll talk to you tonight. Take care.” Take care was Tucker’s on-the-job code for I love you.Source : Fair Play (All's Fair #2)

(「わかった、もう切らないと。また今夜話そう。気を付けて。」”気を付けて”はタッカーの仕事中のコードで”愛してる”のこと。)

可愛いですよね、彼ららしくて。
別に仕事中でも「I love you.」って言って何が悪いのか分からないけど、恥ずかしいのかタッカー?

と思ったんだけど、よく考えてみると確かに私も仕事中に何か急ぎの要件でパートナーに電話しても、「OK. See you tonight, bye.」しか言わない気がする。ごめん、タッカー。今度から私も「Take care.」って言ってみるわ。

Live by the sword, die by the sword

“I care about you, you asshole. Which is why I don’t want you getting any further involved. Your father made his choices. You live by the sword, you die by the sword.” “Die by the s-s-sword?” Elliot was stuttering in his rage. “Are you fucking kidding me?” “Not literally, obviously! I just mean—”Source : Fair Play (All's Fair #2)

(「お前を心配してるんだ。だから、あまり深く関わって欲しくないんだよ。ローランドは自分で選択したんだ。剣に生きると剣で死ぬぞ。」「け、剣で死ぬって?」エリオットは怒りで言葉がつかえた。「冗談だろ?」「文字通りじゃないが、そうだろ!俺はただ—」)

暴力によって解決しようとする人は、暴力によって死ぬから、出来る限り平和的な手段を見つけましょうねっていう格言なんですが、それを言われて憤るエリオット。

で、後に「嫌な言い方してごめん」とタッカーが謝ってるんだけど。

このあたりが第二言語だからか、その文化を知らないからか、「Die by the word」って言われても、全然エリオットの怒りに感情移入出来なかったんですよね。そんなに怒らせる発言だったんだなーって。

まぁ、エリオットとしては、あくまでローランドのために、何が起きているのか、犯人が誰なのかを調べているのであって、犯人を殺す等の暴力的な解決をしようとしてはいないっていう主張があるのかもしれません。

"Talk"

“You want to go upstairs and talk?” he’d say with perfect seriousness. Sometimes Elliot would tease him. “What do you need to talk about?” “I’ll tell you when I get you upstairs,” Tucker would growl.Source : Fair Play (All's Fair #2)

(「二階で話し合う?」タッカーが完璧な真剣さで言っても、エリオットは時々「何について?」とからかい、「二階に行ったら教えるから。」と、タッカーは腹立たしい声で返す。)

カップルによってコードってありますよね。いつの間にか決まってるコード。その言い方が非常に彼らっぽい。

わざとからかうエリオットも可愛いし、分かってるだろ?と返すタッカーもセクシーだし。こういった二人のやり取りは、読んでいてニヤッとしてしまう。

女子会をすると、「どうやってパートナーをSEXに誘ってる?」なんてトピックは挙がるけど、「Talk」は初めて聞いたので、今度おススメしてみよう。

支配されたい欲求

Elliot had an overwhelming desire—need—to be overpowered in bed. He liked to be fucked—quite literally—into submission. In his youth he had struggled with this self-knowledge, resisted it, but as he’d grown up and gained experience he’d eventually accepted the truth that, as important as it was to him to be confident, competent and in control of all other aspects of his life, in bed he was a complete and abject bottom.Source : Fair Play (All's Fair #2)

(エリオットはベッドの中で、とてつもなく支配されたいという欲求、いや、支配される必要があった。彼は文字通り、服従し責められるのを好んだ。若いころは、この欲求に悩んだこともあったが、成長し経験が増えるにつれ、自信を持ち、有能で、その他全てのアスペクトにおいて彼の生活をコントロールするためには重要であると、最終的には受け入れられるようになった。)

シリーズを通して、 エリオットの性癖って熱い ですよね。この設定のおかげで、シリーズが数段階面白くなってると思う。

生活において全てをコントロール下に置きたいから、ベッドの中ではコントロールを失いたい、それによって精神的にバランスを保っている、と。

縛ったり叩いたりの肉体的なD/sプレイまではいかないにせよ、精神的に支配されたい欲求、いえ、欲求ではなくもう無いと生きていけないという程に必要としてるエリオット。

余談ですが、これを読む度に 「きのう何食べた?」 のシロさんを思い出すんですよね…。

“No, Elliot.” Tucker’s voice was rough. “You’re ready when I say you’re ready.”Source : Fair Play (All's Fair #2)

言われてみたーーーい!

はい、今作いちドキッとしたシーンでした。こんなことを、さらっと言ってくれるタッカーがカッコよすぎるし、何より言われてる相手があのエリオットという点が、もう、読みながらベッドの上で転がり回る勢いで悶える。

Eyes closed, Elliot murmured, “Fuck me, Tucker.” Tucker made a disapproving sound. “Come on, Elliot.” Elliot’s eyes snapped open. “Tucker, for Christ’s sake. I’m begging you.” “Say it,” Tucker ordered softly. Soft but stern. And that made it easy because Tucker was in charge here. Hell, he was less than an inch away from castrating him. Elliot had to obey. “Love. Make love to me. Please. Please, Tucker.” And now he was begging.Source : Fair Play (All's Fair #2)

(エリオットは目を閉じ、つぶやいた。「犯してくれ、タッカー。」「おい、エリオット。」タッカーは認めないといった声で返した。エリオットは目を見開き、「タッカー、お願いだから、頼むよ。」「言えよ。」タッカーは優しく命令した。優しく、だが厳しく。容易なことだった。ここではタッカーに主導権があるのだから。クソッ、エリオットは去勢されることから1インチも離れていなかった。従うしかない。「抱いて。抱いてくれ。お願い、お願いだよ、タッカー。」もう彼は切望していた。)

この本で一番熱いシーンだったんじゃないでしょうか?

普段の頑固で気が強いエリオットとのギャップが激しくて、私の顔が緩んでしまう。もう、2人が楽しそうで何より。ちょこちょこ読み返したくなるシーン。

それにしても、いつも思うんだけど「fuck」ってどう日本語に訳すのが自然なんだろうか…。

このあたりに彼らの関係が滲み出てる

“I’m not good at saying it. But I feel the same as you.” “You’re terrible at saying it,” Tucker informed him. “But yeah, I still know.”Source : Fair Play (All's Fair #2)

(「俺は言うのがうまくないんだけど、でも、お前と同じように想ってるよ。」「あぁ、言うのが下手だな。」タッカーは続けた。「でも、それも分かってる。」)

お互いに頑固で反発し合ってる割に、分かり合ってるのが彼らの関係。結局これから先も、何度も何度も喧嘩し合いながらも、その度に仲直りして、仲を深めて、ずっと一緒にいるんだろうなぁと。

ただ側にいて抱きしめる

Elliot put his drink aside and pulled Tucker into his arms, holding him tightly. How many times had Tucker done the same for him? Just...been there for him? After a surprised instant, Tucker’s arms locked around Elliot.Source : Fair Play (All's Fair #2)

(エリオットは飲み物を脇に置き、タッカーを腕の中に引き寄せ、しっかりと抱きしめた。何度タッカーはこうしてくれただろうか?ただただ側にいてくれた。タッカーは一瞬驚いた後、エリオットに腕を回した。)

長期付き合うカップルにとって、落ち込んでいる時にこそ、一緒にいてくれて、支えてくれる相手かどうかって、大事なファクターだなと思うんですよね。

こちらのシーン、個人的にタッカーみたいに大きな男が弱ってる姿って非常にグッと来るし、支配されたい欲の強いエリオットが、そんなタッカーの姿に失望したりもせず、パートナーとして寄り添ってる姿が好きだったりする。

家族って作るもの

“I’m here. Family isn’t just about who gives birth or who sends you ugly ties for Christmas. I’m your family. You’re my family.” Tucker’s arms clamped so tight, Elliot wondered if his ribs would crack. Then Tucker released him. “Yeah.” His eyes were too bright and he wiped his forearm across them. “You’re right.” The sex that night was slow and sweet. Elliot took the lead, all his focus on pleasuring Tucker, letting him know he was loved, appreciated, that he belonged to Elliot—just as Elliot belonged to him.Source : Fair Play (All's Fair #2)

(「俺はここにいるよ。家族は産みの親や、クリスマスに不細工なネクタイを送って来る人だけじゃないだろ。俺がお前の家族だよ。」タッカーが腕をきつく締めるので、エリオットはろっ骨が折れそうだと思った。そして、タッカーは腕を緩めた。「あぁ。」彼の目は潤み、手首で拭った。「そうだな。」その夜のセックスは、ゆっくりと甘かった。エリオットがリードし、タッカーを満足させることに集中した。彼が愛され、感謝され、タッカーがエリオットの所有物であるように、エリオットもまたタッカーの所有物であると伝えるために。)

養子として育ち、家族の愛を知らないタッカーが、毎週父・ローランドと夕食を共にしているエリオットと一緒に過ごすのは、彼にとって少々辛かったんじゃないでしょうか?

今作で、このお互いに惹かれ合ってセックスをする関係、いわば性欲メインな「恋愛」から、「家族愛」へと彼らの関係が変化していく様子を、エリオット宅の玄関マットくらいの立ち位置で眺められて、私は非常に幸せでした。

ジョシュ・ラニヨンさんの作品は、このカップルを眺めていたい欲?見守りたい欲?が沸々と湧いてくる作品が多いな、と思う。

素直にタッカーが好き

They had their battles, but he couldn’t remember ever feeling more comfortable or content in his adult life than he had these past months with Tucker.Source : Fair Play (All's Fair #2)

(喧嘩はするけど、エリオットはタッカーと過ごした数カ月ほど、彼の人生の中で居心地が良く、満たされたと感じることはなかった。)

タッカーにこれをそのまま伝えてあげて欲しいんだ。


上でも言ったんですが、1巻や3巻に比べてどうしても地味な印象を受ける今作。

やはり過去の事件を掘り返すようなミステリーは、誰も幸せにならないし、スッキリするエンディングを迎えないですね。エリオットパパも言ってましたけど、「ノビーを逮捕して、それで幸せか?」と。

アクションも少なかったですし。

加えて、エリオットとタッカーのロマンスも、相変わらず喧嘩し合い、愛し合いな関係ですが、「関係の維持」へとストーリーが移って行っているので、どうしても1巻よりも穏やかになってしまいました。

しかし、3巻を盛り上げるための2巻!

不気味な彫刻家のシリアルキラー・コリアンはまだまだ据え置きですし、謎のMC・マコーレイが登場しつつも、全然活躍してないので、3巻が非常に楽しみになるような続編でした。

書籍紹介

前から疑問なんですけど、私、エリオットにメガネの印象がないんだけど、そんな描写ありましたっけ…?
眼鏡だとベイビーグロックで狙うときに照準が歪んだりしないのかな?もしかして、射撃用なんだろうか?

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ジーナ

鞭が似合うとか、壇蜜に似てるとか言われる、M/Mロマンス小説とBLマンガ愛好家。
カナダ、バンクーバー在住。
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